報告 第9回アーモンドの会(障教懇)
 
 2003年10月11日(土)10:00〜午後3:45、埼玉和光教会にて、埼玉地区第9回アーモンドの会(障がいを負う人々と共に生きる教会を目指す懇談会)が開催されました。開会礼拝では、アーモンドの会実行委員長の三浦 修牧師(埼玉和光教会)の説教がありました。

 その後、「地域の悩みを教会の悩みに ―弱さを絆に―」と題して、向谷地 生良(むかいやち・いくよし)さん(浦河日赤ソーシャルワーカー)、佐々木 實(ささき みのる)さん(べてるの家メンバー)、松本 寛(まつもと ひろし)さん(べてるの家メンバー)による講演がありました。

 「べてるの家は1982年に精神障害者の回復クラブ「どんぐりの会」の有志が教会の古い会堂を住居として借り受け、誕生しました。後に昆布加工の下請けから、自前での製造販売に取り組み、1993年には地域で介護用品販売に取り組む有限会社を設立しました。2002年には社会福祉法人を設立。当事者が理事長として就任したことは全国のさきがけとなっています。」(アーモンドの会・資料より)

 日高地方。北海道の中で、最も不便で最も貧しく最も困難な地域であり(「市」が一つもない!)、北海道の平均からみてもアルコール依存症の人、精神障害を抱える人の割合が高いとのこと。精神障害者は地域に安心がなかった。トラブルは起こす、働く場所がない、住む場所がない、孤立。安住の場としての「精神科病棟」だったという。向谷地さんが浦河伝道所の教会堂に住んでいたところに、7年間の入院を経て日赤から退院してきた佐々木さんも住み始めた。

 浦河伝道所は、1956年北海道特別開拓伝道で建てられた。苫小牧地区の協力宣教体制の中で支えられている。「教会員の年金受給者の割合が全国一かもしれない貧しい教会だけれど、健常者にやさしい教会です」、と紹介された。べてるの家は、向谷地さんや佐々木さんが住んでいた浦河伝道所の旧会堂を改修したものである。教会の中に佐々木さん初め、精神障害者の人々が増えてきた。となりのべてるの家(共同住宅)の住民達のいろいろなトラブルもあり、警察や消防車がくることもあった。その中で教会を去る人もいた。浦河伝道所は地域の悩みを教会の悩みとする「悩む教会」になったという。

 佐々木さんは、横浜で働いていたけれども発病して実家に戻り、入院となった。「そのとき、これで自分の人生が終わりだ、という絶望を味わっていた」と佐々木さん自身の口から語られた。佐々木さんの言葉で印象的だったのは「弱い人は、強いんですよ」というもの。「弱い人は差別しない。生きづらさの中に“生きたい!”という力が表されてくるから」。ニコニコと微笑んでおっしゃる。いろいろなところを通ってこられたのだな―と感じた。今、佐々木さんは、(有)福祉ショップべてる社長であり、社会福祉法人の理事長である。

 もう一人のゲスト松本さんは、向谷地さんの質問に答える形で、「病気になりたかった自分だった」と語られた。松本さんは5歳から幻聴体験が合ったという。「死ね」とか「殺すぞ」とか「お前は馬鹿だ」とか聞こえてきた。本当に耳から聞こえるように。それが小さい頃からだったのだから、大変なことである。そして、松本さんはプロ野球の選手を目指して、体を鍛えてがんばった。起きている間は猛トレーニングをしていた。そのがんばりがやめられなかった。心の隅で「病気になればこのがんばりをやめられる」とも思っていたそうだ。今は、べてるの仲間と一緒に幻聴さんとうまく付き合う方法を研究している。「病気になって友達が増えた」と語られた。

 べてるの家のメンバーと苦楽を共にしてきた向谷地さん。精神医療の構造に問題を感じていた。医学は「囲」学、看護は「管」護、福祉は「服」祉であって、当事者を囲い込み、管理し、服従させてきた。一方、過疎化、産業の衰退、という地域の課題があり、歴史的な背景(朝鮮人の強制徴用・アイヌ民族への差別)もある。当事者が生きていくことは、容易ではない。その悩みを抱えながら、今日まで歩んできた。べてるの家が歩みの中に獲得してきたキーワードをいくつか紹介してくれた。味わい深い言葉である。
苦労を取り戻す/地域のために/社会復帰から社会進出へ/べてるの繁栄は地域の繁
栄/「作業」から「商売」へ/弱さを絆に/
 「一緒に転び、一緒に苦しみ、短いバトンタッチを繰り返すようなべてるの家の歩みであるけれども、そのようにして今まできたのだ」と、楽しそうに、軽妙に語られた。
 なお、参加は28教会・2団体より149名が出席されました。

報告:金田佐久子(ホームページ委員・西川口教会)


開会礼拝(説教 三浦修牧師、右の方は手話通訳者)


OHPに、語られたものをすぐに書いて、投影します。


向谷地 生良さん


べてるの家メンバーの松本さん(左)、佐々木さん(中央)


午後の部で、証をされた横井忠弘兄(小川教会信徒、右)と司会の長尾邦弘牧師(小川教会)。長尾牧師が質問される形で証をされましたが、二人の息はピッタリ、とても明るく楽しい証しでした。


会衆の様子、どこからも自然と笑みがこぼれて来ました。



HOME